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不動産賃貸管理業のコンプライアンス

コンプライアンス 賃貸

不動産賃貸管理業のコンプライアンス

著者 江口 正夫(弁護士)
定価 1,540円(本体価格 1,400円 + 消費税10%)
ISBN
形式 A5判 127頁

身近な判例から見るリスク認識と対応のための法律実務

賃貸管理事業を行う上で重要なのは、専門的な管理の導入による競争力UP・事業採算の向上です。
それには、いかに賃貸事業に付随するリスクを管理するかが必要となります。
本書は、賃貸管理業務に内在するリスクを正しく認識し、それらに適切に対応するために必要な法律の知識をわかりやすく解説しています

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第1章 企業経営とコンプライアンス

1.コンプライアンスとは?  
    (1)なぜ最近になってコンプライアンスが重要視されているのか  
    (2)利潤追求団体である会社組織においてコンプライアンスが求められる理由  
    (3)コンプライアンスを軽視すると、どのような事態が生ずるのか?  

第2章 賃貸借における自力救済とそのリスク

1.賃料滞納に対する対応措置  
    (1)ロックロックの事例について  
    (2)合鍵による立入りについて  
2.賃料を滞納したまま所在不明となっている場合の措置  
    (1)賃借人が荷物類を残置している場合の法的な処理方法  
3.入居者が行方不明の場合の処理方法  
    (1)裁判例の検討〔ケース1〕大阪高裁昭和62年10月22日判決  
    (2)裁判例の検討〔ケース2〕東京地裁昭和62年3月13日判決  
    (3)裁判例の検討〔ケース3〕東京高裁平成3年1月29日判決  
4. 借主やその関係者と連絡が取れた場合に取るべき措置  
    (1)賃借人と連絡がとれた場合  
    (2)連帯保証人と連絡が取れたとき  

第3章 仲介業者の借主に対する事前説明義務

1.説明義務の法的根拠  
    (1)法35条の重要事項説明事項の追加及び法37条の書面の交付義務の内容の一部修正  
    (2)法47条の故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為の禁止に追加  
2.重要事項説明の要否に関する事例検討(過去に自殺があった物件の賃貸借ないしは売買契約)  
    (1)6年3ヶ月前のマンションでの自殺(横浜地裁平成1年9月7日判決・判時1352号126頁、判タ729号174頁)  
    (2)6年11ヶ月前の山間農村地域における一戸建てでの自殺(東京地裁平成7年5月31日判決・判時1556号107頁)  
    (3)7年6ヶ月前の自殺のケース(大阪高裁昭和37年6月21日判決・判時309号15頁)  
    (4)自殺に関する重要事項説明の要否について  

第4章 賃貸管理と火災の責任

1.借主の責任で賃貸目的物が焼燬した場合  
2.軽過失と重過失  
3.第三者の犯罪行為や第三者の故意過失による賃貸建物の被害について  
    (1)第三者犯罪行為による建物所有者や管理会社の責任  
    (2)建物所有者や管理会社の責任原因  
    (3)オーナーが火災警報器を設置していない場合に、入居者の失火により火災が発生し、入居者が死亡した場合のオーナー責任  
4.改正消防法(平成16年6月2日公布)  
    (1)消防法改正による全ての住宅での火災警報器設置の義務付け  
    (2)火災警報器設置義務付けの背景  

第5章 賃貸住宅の居室の鍵に関する管理責任

1.鍵の交換費用の負担特約の効力  
    (1)鍵の交換と貸主側の責任  
    (2)鍵交換をしないために生じた損害の貸主側の責任  
2.ピッキング被害に遭った場合のビルオーナーや管理会社の責任  
    (1)ピッキング被害  
    (2)ピッキングに関する裁判例(東京地裁平成14年8月26日判決)  

第6章 個人情報保護法

1.個人情報保護法の5つの基本概念  
    (1)「個人情報」の定義(法第2条1項)  
    (2)「個人情報データベース等」の定義(法第2条2項関連)  
2.個人情報取扱事業者の義務  
    (1)個人情報取扱事業者とは?  
    (2)「利用目的」に関する規制  
    (3)「個人情報の取得」に関する規制の内容  
    (4)「個人データの安全管理措置」と従業員、委託先に対する監督  
    (5)「個人データの第三者提供」の禁止  
    (6)本人の求めに応じた「開示」「訂正」「利用停止」  
3.個人情報取扱事業者の義務と罰則  

第7章 原状回復に関する特約

1.原状回復とは?  
2.原状回復の基本理論  
3.原状回復ガイドライン  
4.民法の考え方と異なる原状回復特約を用いる際の留意点  
    (1)3つの要件の充足  
    (2)賃借人の「通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うこと」の認識  
5.原状回復特約の有効性と消費者契約法  
6.原状回復に関する判例の動向と消費者契約法  
    (1)敷引特約が消費者契約法第10条により無効とされた事例〔神戸地方裁判所平成17年7月14日判決〕  
    (2)自然損耗を賃借人負担とする特約を消費者契約法違反を理由に無効とした事例〔京都地方裁判所平成16年3月16日判決〕  
    (3)大阪府住宅供給公社の特優賃住宅において通常の使用に伴う損耗分を賃借人負担とする特約は公序良俗違反するものでなく、有効とされた事例〔大阪高裁平成16年5月27日判決〕  
    (4)大阪府住宅供給公社の特優賃住宅において通常の使用に伴う損耗分を賃借人負担とする特約がそもそも成立していないとされた事例〔最高裁平成17年12月6日第二小法廷判決〕  
    (5)民間賃貸住宅の場合とは異なり、事業用ビルにおけるオフィス賃貸借の場合には、契約書に特約で、「賃貸借契約締結時の原状に回復しなければならない」と定められているときは、文字通り、契約締結時の状態にまで原状回復して返還する義務が賃借人にあるとされた事例〔東京高裁平成12年12月27日判決(上告不受理により確定)〕  
    (6)営業用物件の賃貸借契約において、賃貸借物件の通常損耗分の原状回復費用を賃借人に負担させる旨の特約の合意があると認めることはできないとされた事例〔大阪高裁平成18年5月23日判決〕  

第8章 賃貸契約の終了と立退きに関するリスク

1.現行の借地借家法による賃貸借契約  
    (1)普通借家契約の終了  
    (2)定期借家契約の終了  
    (3)賃貸借期間満了時に明渡しを要求する場合の措置  
2.賃貸借契約の終了原因  
3.賃借人の賃料滞納を理由とする賃貸借契約の解除  
    (1)信頼関係破壊理論  
    (2)相当期間を定めた催告の必要性  
4.使用目的違反を理由とする解除  
5.無断譲渡・転貸を理由とする解除  
    (1)無断転貸の場合(最高裁昭和28年9月25日判決)  
    (2)無断譲渡の場合(最高裁昭和45年12月11日判決)  
    (3)最高裁平成6年7月18日判決  
    (4)最高裁平成9年2月25日判決  
6.正当事由によるとする契約の更新拒絶  
    (1)借地借家法に定める「正当事由」の要素  
    (2)建物の老朽化を理由とする更新拒絶  
       ア.東京地裁平成3年11月26日判決  
       イ.大阪高裁平成元年9月29日判決  
       ウ.東京地裁平成2年1月19日判決  
       エ.東京高裁平成12年3月28日判決  
    (3)建物の老朽化を理由とする明渡しの具体的な手順  
         ア.老朽化の程度の確認  
         イ.老朽化の度合いと正当事由の有無の判断  
         ウ.立退料の提供との組み合わせ